Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

いつまちゃん『来世ではちゃんとします』2

★★★★☆

「えっ、このキャラクターも掘ってくんだ?」みたいな意外な感じが、むしろこの世界への肯定感を増していくのが改めて素晴らしい。発信すべきメッセージのある作品だなと思う。いま読み返したらベタだなとも思ったけどクリスマスストーリーも上手いし好きだし、ちゃんとキャラ萌えも出来るし(大森×松田であわや、の展開はすごい面白い)、いやー性的な要素こそあれテレビとかNetflixとかAmazonオリジナルとかで実写ドラマ化したらすっごいいいんじゃないか……と思ったら今度やるんだ!!すごい!!*1

オタク話題以外に広げて描くにはちょっと難しいテーマなのはしょうがないと思うけれど、Aセクの高杉さんの出番はもうちょっと見たいナ。

*1:※2019年11月28日執筆時点。2020年1月より放送。

いつまちゃん『来世ではちゃんとします』1

★★★★☆

好き!! とある映像プロダクションで働く4人はそれぞれ「性的にこじらせています」から始まるオムニバス4コママンガなのですが、まずギャグが好きで(「セフレよりセフレの犬が好き」「ドヒョォォォォ女性ホルモンがおどる〜!!!」)、ドライな空気感に身も蓋もないストーリー、筆者の鋭い観察眼、そして「どこかに自分がいる」ようなユーモアとキャラクターへの哲学がとってもいい。大森さんのセフレA・B・C・Dもソープ嬢の心ちゃんも、回を進むにつれてどんどんバックボーンや人間性が見えていくのが本当にうまいし、そしてスタジオデルタの中ではみんな仲いいのがホンマめっちゃグッド……ここだけフィクションだよなって思ってしまうくらい、そこが尊い……。ぶっちゃけ絵はそこそこ雑なんだけれど、不思議なくらい「だからこそリアル」に重なって見えてくるものがあって。ああ、「普通の子」の存在って普通じゃなかったんだなと思える瞬間とか、こんな感覚って当たり前じゃないんだと気がつく夜とか、例えば生きていくことが水泳なら水面に上がるときの息継ぎの瞬間に、この物語は小さな小さな希望を宿す。それがマッチ棒くらいの灯りでも、みんなそれで生きていくしかないんだよね。<まーいっか/来世からちゃんとしますということで>ってワードの、クソしょうもない程度の肯定感、すっごくいいな。

しかし映像業界下請けワードがあまりにもリアル過ぎて、取材モノだとはとても思えない。知り合いとは言わずとも名刺貰ったことある人がこれ描いている可能性ある……。

山口つばさ『ブルーピリオド』6

★★★★

ネタバレなので諸々触れづらい!けど!今巻も良かった。一貫して、八虎が「考える葦」なのがグッドですね……表現者はそういうタイプばかりじゃないので。悩んで悩んで悩んで悩んで、たとえそれがベストじゃなくても、いまこの瞬間の自分だけの答えを出して、最後には諦めて、そして諦めた瞬間に、作品は完成するのだ。

アッチあい『ポチごっこ。』

★★★★

『オゲハ』『このかけがえのない地獄』のアッチあい連載復帰作。掲載誌は何とヤンジャン。この作家のイジワルで人間の血うっすいところ(週刊少年ジャンプを踏み台にして首を吊るシーンは攻め過ぎだろ!)が大好きで、この作品でも人間を人間扱いしようとしない、冷徹で、ある種不気味な(サイコパスな)思想がぞんぶんにあってそこがすごい読んでて快感。また今回も、その快感と「社会という“さらに”不気味なシステム」がテーマと呼応し、単なるフェチじゃなくてドラマにまで見事に展開してっているのがとても良かった。一方、ざっと読み終える分にはわりとサックリした仕上がりに感じられるのに、もう一度読み直すと、実はなかなか切ないボーイ・ミーツ・ガールものとしてちゃんとジンと出来たことも良かった。これを踏まえた、さらなる傑作を期待してしまう上下巻。/しかし週刊連載でこの絵はすごいな……美少女イラストレーターとしてもバツグンの方ですね。

永田カビ『現実逃避してたらボロボロになった話』

★★★★★

読み終えてつくづく思うのは、「エッセイ」やら「フィクション」やらの分類は全くもって“読者には”何の意味も無くって、ただただここにあるのは圧倒的に面白いマンガだ。僕も以前「カビさんはフィクションでヒットするといいんだろうな」って書いてしまったことがあるけれど、その時の自分は目が曇っていたとしか考えられない。この作品の終盤に訪れる凄まじいカタルシスは、もはやフィクション・実話を越えた普遍的な感動があって、それはカビさんの最初の作品からずっとずっとそうだったんだよ。描かれるのがあまりにもあんまりな状況なので「それなのにマンガが面白すぎて申し訳なくなるなぁ」って気持ちとか、本質はやっぱりそこじゃないんだよな。僕ですら勝手に友達だと思ってるし、そう思っている方は日本中に、いや世界中に今やたくさんいらっしゃるであろう、本当に、紛れもない、天才漫画家。ふだんマンガを読んでも感動できない方にほど地球の隅々にまで行き届いてほしい一冊だ。年齢は僕のひとつ上。一緒に生きてゆく。

高野ひと深『私の少年』7

★★★★

この巻、見方によってはすごい急展開だと思うんだけれど、でもマァ「ちょっと慌ただしいな」とは思いつつ、ストンときれいに胸に落ちるものがあるのは確かで。その「ストン」は、つまり、どれだけ私たちがこの二人の関係を「大人」「子ども」と区切って読んでしまっていたかということだよね。思えば「14歳編」は、ずっとそのことを描くために延々周りくどい迂回ばかりをしていたような気もする。そんな雲が晴れたような第7巻。ということはそろそろ第二部も完なのかな……?/しかしこの作品、前からそうだけれどわりと映画的な演出が多いのが面白いです。トゲ抜きしながらあの話をするあたりとか(前の巻だけど「間違ってたのにマルつけてた」とか)、マンガというよりは、アニメーションや実写ドラマ的演出技法な気がする。