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『音楽はあるか』以来、ちょうど6年ぶりになるニューアルバム。
ほぼ全曲（ライブで）既に聴いたことがある、という意味ではバンプの『aurora arc』に近い状態だったけれど……本当に、本当に、本当にすごい曲ばかりが並んだアルバムだ。唯一の未発表新曲「ヒューストン 〜ぼくらは未来へ〜」はファーストアルバムの1曲目「ぼくのロケット」を意識したような内容で、15年のあいだ磨かれ続けたVo.山岸の歌詞・歌声・メロディ・そして音楽世界をしんしんと、やがては高揚を伴って堪能できる。一転して2曲目「あるよ」は、ああ！ ザッツ・ウラニーノ！！ って感じの、しょぼくれた人々を巧みにスケッチしつつ希望を描き出した大大大名曲で、もうここでいきなりクライマックス感がばりばり（出し惜しみとかないの！？）。最後の畳み掛け、そして何気ない伏線がクライマックスに繋がるの、ほんとに、うまい。（MVがインディーズ1期をイメージしたヘボマンガなのも最高!!）
自分でもびびったのですが、続く「ロックンロールで殺して」の冒頭でなぜか涙がぽろぽろ出ちゃって……ライブで何回も聴いてる曲なんだけど、初めてこの曲を理解できたような気がした。「中年花火」を抜いたらこのアルバムで一番好きかも……最初の1秒から最後の1秒までロックンロールの魔法がかかってる。僕も「アニメ作家を辞める」とか言い出した時は即座にアニメーションでぶっ殺してください。
音源になって大化けしたのは「本当のこと」だった。歌詞カード3〜4ページ目にあたる5〜8曲目は、この6年間の新機軸であるダークサイド・ウラニーノのパート。これら4曲をまとめ上げる「本当のこと」は、弾き語りの印象から大きく飛躍したドラマチックなアレンジになっていて、本当に素晴らしかった（「世紀末の歌」から途切れずに続く演出もすごい！）。デリケートなことを扱っている曲だけれど、しっかりそのスケールに応えた熱演と熱唱。圧倒された。
9〜12曲目は再びフォーキーなアレンジや世界観が詰まった曲に。ツアーバンド・ウラニーノの「はりやま橋でつかまえて」に続く地方ソング「山陽道はまっすぐに」は、自分も一時期通い詰めていた広島を軽やかに歌い上げたカントリー・ナンバーで、歌詞も、リズムも、そして暖かなギターの音色も、まるであの紙屋町の夜のオレンジ色みたいにやさしくて、涙が出そうなくらいの幸福感がある。なんていい音楽なんだ……（でも、青い帽子のチームには手加減してね！）。
聴き終えてしまえば、「逆にこれだけの曲を揃えるのに6年しか掛からなかったの！？」感すらあるベスト的大作。特に最初の4曲は、ウラニーノのこれまでのキャリアを書き替えるくらいの名曲に次ぐ名曲揃いで、なのにどれもいい意味で「軽さ」があって、もう紛れもなくキャリア・ハイだと思う。すごいオリジナリティだ。話逸れるけれど、やっぱりいろいろあった（のだと思う）し、こうしてまた「ウラニーノのアルバム」が聴けること自体マジでありがたいことなのに、やっぱり大好きな、音楽のことが大好きになったきっかけのウラニーノの新曲が、相変わらずめっちゃ良いってこと……一緒に歳をとれていること、一方的にだけれど、本当に、幸せです。ここに生まれて良かった。高校一年生のとき、出逢えて、よかった。
ただ、「中年花火」と「日陰者」はどちらかというと『naked.』バージョンのふくよかなミックスのほうが好みだったかナ。
＜ぼくを殺してくれ ぼくを殺してくれ
君のグルーヴで 君のそのリズムで
ぼくを殺してくれ ぼくを殺してくれよ
お願いだぼくを ロックンロールで殺して＞
＜薬じゃ届かない ナイフでもえぐれない 心のずっと奥を震わせたまんま
ぼくは生きていたいんだ ぼくは生きていたいんだ
だからお願い ぼくをロックンロールで殺して＞
ウラニーノの音楽は、"約束"だ。引き出しの中に乾電池があっても、ポケットの中にピックがあっても、「わたしには何かがある」ことにはならない。でもね、この曲を聴き終えたら、あともう一度だけでいいからさ、引き出しを開けたり、ポッケをさぐったりしてごらんよ。探しているものはなかったとしても、乾電池やピックくらいはさ、あるかもしれないじゃん？ な、約束。
ウラニーノのニューアルバム『あるよ』は一般流通しておらず、CDは公式通販・ライブ会場のみで入手することができる。2020年3月23日より、配信・ストリーミングが解禁された。
収録曲のうち「中年花火」などが収録されたEP『naked.』もストリーミングでリリースされている。『naked.』の記事はこちら。
ウラニーノ「中年花火」official music video
2019年12月3日追記：「中年花火」のMVが公開されたのでリンクをぺたり。めちゃめちゃ出来がいい。ウラニーノ史上一番いいMVなのでは……。
2020年3月23日追記：『あるよ』が配信・ストリーミング解禁されたので本文を修正。引き続きCDはまだ一般流通していない。
