Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

Orangestar『UNDEVELOPED FLOWER-PLANET』

★★★★☆

Orangestarの没トラック、デモ音源などをまとめた未発表作品集。久々のOrangestar&初の配信リリースということもあって、この手の作品としては珍しくチャート1位を獲得したらしい。

1〜2分のインストや、ワンヴァースしか出来ていないトラックばっかりノンストップで流れる系のアレなのですが……なんかもはやクレイジーなくらい単純で、ミニマルで、単なる繰り返しみたいな曲もいっぱいあるんだけど、そんなキーボードぽろんぽろん、で、ここまでドキドキするフレーズを生み出しているんだから、やっぱりOrangestarはAviciiくらいの天才なんだと思う。そんなシンプルなのにどれも“物語”感が色濃くて、カメラの向こうの空気感すら感じられて……歌詞すらないのに、である! 下手に歌が乗っているよりもずっとドラマチックでワクワクと感じられるかもしれない。気づいたら何回も聴いちゃうな。いやー!これ、すごいや!!

聴いたことのあるメロディも途中スッと出てきたりして、Orangestarのさらに大きな物語が見えてきたりとか……色々あなどれないアルバムです。ボカロPの、押し入れの中にあったアルバム、みたいな下駄を外しても十分に面白いしよくできているし。決してマニア向けではなく、むしろ初めての方でもおすすめかも。

PEOPLE 1『大衆音楽』

★★★☆

え? いいじゃんいいじゃん!

『GANG AGE』よりも前にリリースされていたep。YouTubeで聴ける範囲では圧倒的に好みが『GANG AGE』に集中してたけれど、聴き通すとこちらも十分にいい。EPとして、1曲目から5曲目までしっかり流れがあるのが特に良かった。こういうのがやりたいアーティストは応援したいです。ソングライターが2人いるのかな? けっこう曲によって色が違うのがいいのかもしれない。最後の曲が特に好きです。

PEOPLE 1『GANG AGE』

★★★★

「常夜橙」を収録したPEOPLE 1のep。

「フロップニク」「東京」までは知ってる状態で聴いてみたんだけど、ちょっと意外だったというか、思った以上に……聴きやすかった。バンドサウンドではない、だけで、バンドのようなアンサンブルの楽しさがどの曲からも感じられる。そして「常夜橙」の時も強く思ったけれど、シニカルでありつつもそこに当事者性がある、加えて「ここではないどこか」へちゃんと眼差しが向いている、そんな歌詞がとてもしっかりしていて、何というか、「こちら側の人間」だなと! オラオラっぽいヴォーカルなのに言葉をよく聞くと……みたいなギャップも良い。

「BUTTER COOKIES」ではロキノン要素もあるハッピーなロックナンバーを、「ライカ」では繊細な弾き語りを、「イマジネーションは尽きない」では日本語パンクをやっちゃうアレンジの広さも楽しい。この辺りは元ネタ(のジャンル)が聴いててすごくはっきりしていて、そのあっけらかんとした感じも今の時代っぽいのかもね。

Kizuna AI『Replies』

★★★★

キズナアイの1st EP。

エレクトロ路線は継承しつつも、前作では少々鼻についてた「作られた感」から脱却し、いい意味でより面白い内容になっている。あ!あなたはそんな声の人だったんだ!って感じたくらいヴォーカリストとしてグッと個性が前に出た「Awakening」、その真逆へ作り込んだ甘々な「FL-AI-YER」など、佳曲が並んでいた。

キズナアイ、って意識しなくても聴けるグッドトラックが揃っているのがとても嬉しいし、音楽活動への覚悟も伝わった。このサイズのEP、というのも上手いですね。ミニアルバムにするより濃縮して聴ける感じがしました。お金があるから、だろうけれど、全曲MVが作られててYouTubeでフル公開されてるのもナイスです。

富士葵『有機的パレットシンドローム』

★★★☆

富士葵のファーストアルバム。これも出たのが1年前……*1

ときのそらのアルバムでも書いたけれど、富士葵もまた、「ルーツはオタクカルチャーとは全然違う所なんだろうな」と思わせられるVTuberシンガーの一人。一回聴けば「おおっ!」となる歌唱力は確かに素晴らしいのだけれど、これもまたときのそらと一緒で、「オタクカルチャー的な曲」に特化した個性かというと、意外とそうでもないかなというか、どちらかといえばじっくり聴かせるタイプの大人っぽい歌声の持ち主です。そこのギャップにときのそらは『Dreaming!』で苦しみつつも立ち向かっていたのかな、という印象があったのですが、『有機的パレットシンドローム』はちょうどその真逆。一見バラエティ豊かな内容に見えて、その実すっごいコンセプチュアルな1枚に仕上がっていた。

ちょっと悪くも聞こえる言い方をすると、「平成初頭のアニソンシンガー」のようなオールドファッションのアルバム。「MY ONLY GRADATION」の影山ヒロノブみたいなノリや、「まだ希望に名前はない」の90'あふれる歌詞やアレンジ(ギターの感じとか特に!)は多少アップデートされているとはいえ思いっきり懐メロのそれだし、4曲目としてはあまりにも重い*2「Let it snow」も、今の10代が聴くバラードというよりは、20年前の、お父さん世代の「歌姫」要素が強く感じられる。これに続く、思いっきりスガシカオに挑戦したファンクナンバー「イタリアンレストラン」の唐突さも面白い。次のナユタン星人提供の「エールアンドエール」でいきなりボカロになるのですが、さすがにこの1曲だけは浮いていて、その後の「君のミライ」や「ユメ→キミ」も、ああ、僕が小学生の頃のアニメでかかってたヤツだな……って。

楽曲そのものもだし、特にアレンジなんだけれど、あまりにも聞こえ方が古臭いのでもっと大胆に「イマ」に寄せてもいいのかな、とは正直思った。けど、だけれど、これはこれですごい完成されているというか、全体を包む「懐メロアニソン」感が非常にコンセプチュアルで、アルバムという「作品」としての強度がしっかりあって。「まだ希望に名前はない」のノスタルジックな手触りなんて聴けば聴くほどに確かに心地良くて。これがやりたいことならば、やるべきだし、その意志の強さはすごくリスペクトできる……! やっぱりこの歌声に、このアレンジをのせたら、ピッタリくるんですよね。30年前に30歳ではなかった自分でも、はっきりそう感じられる。それくらいマッチしている。「VTuberだから」……という枕詞に良くも悪くも縛られてなくて、そこがめっちゃすごい。こんなカワイイジャケットのアルバムの中身がそれ、というギャップにくらくらもするけれど……!

だから、今まで気づいていなかったけれど、実は最初っからやりたいことがバチッと決まってるアーティストさんだったんだなと。これが「ONE TEAM」の成果なのか、あまり意図しない結果こうなっちゃったのか、ではかなり印象が違うのですが、とにかくアルバムとしてはそういう1枚でした。正直、全体的には自分にとってあまり耳馴染みがないジャンルだし、いま流行っている音楽でも特にないかなと思うので、オススメ……かどうかは微妙だけれど、でもこの感想文でちょっとでも興味を持った方がいれば、絶対にハマると思う。その場合はぜひ。自分は「オーバーライン」が良かったです。

*1:2020年12月19日執筆現在。

*2:そして、だからこそこの曲順だといい意味で「目立つ」。

輝夜月『xxx』

★★★★☆

輝夜月の1stアルバム。何だかんだで聴くのに1年かかってしまった……*1

最初に聴いたときも衝撃だった「Beyond the Moon」、超轟音ラウドロック(ラウドポップロック?)の「Dirty Party」、エモさの塊のような「NEW ERA」やら、とにかくブッ飛んだすンごい曲ばかりが並んでいる。トラックがめちゃめちゃハイレベルだし(特にギターがすげえ……)、ポップでインパクトのある輝夜月のヴォーカルがそこにバチッと決まっている。「幸福論」のカヴァーではちょっと違う歌い方をしていたりもして、とにかく彼女の歌声そのものが放つオーラがぎゅんぎゅんに詰まってて、パーフェクトなポップアイコンと化しているのには圧倒させられた。全8曲でアナログレコード片面で済む短さもこの場合はすばらしい……*2

この後(いや、これより前にはおそらく既に)プロジェクト自体が空中分解してしまい、続きの音楽活動が今のところ望めないのが惜しいくらいの見事な1枚。輝夜月+PABLOのチームがもし本気で音楽業界に殴り込んでたら……と思うと今でもワクワクしてしまいます。

*1:2020年12月19日執筆現在。

*2:甲本ヒロトが言うように、ロックンロールはおしっこが我慢できる長さじゃないといけないんだなぁ……。