Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『リズと青い鳥』

★★★★☆

最高っしょ……。傑作『聲の形』と同じ座組みだけれど、さらなる挑戦が数多くなされている意欲作。もしかするとこの手の作品では初めて真正面からスタジオジブリ・リスペクトに取り組んだのでは? と思える震えるようなオープニングから、小さな足音がリズムを刻む、とても印象的な登校のシーケンスが立ち上がってゆく。物語は、たったふたりの登場人物の心を丁寧に、丁寧に、ひたすら丁寧に追いながら、事件といえるような出来事はまず何もなく、淡々と時間を積み重ねていく。やがて訪れる、決定的な断絶の瞬間へ、カメラはゆっくり進みながらーー。

音楽の力が素晴らしい。牛尾の劇伴は前作にも増して研ぎ澄まされ、どんなセリフよりも雄弁に物語を語る……吹奏楽の演奏はどんな絵よりも、アニメートよりも、演出よりも、確実にわたしたち鑑賞者の心を引き裂く。こういう方向にまで振り切れるディレクションって、ほんとに、オトナだ。悔しい……。ものすごく地味な、小さな、もしかすると誰しもが経験しているくらいの、ありふれた痛みなのかもしれないけれど、ここまで隅々に気を配られて作られているだけで……芸術作品ではと思えるまでの繊細な映画に仕上がるのだから、何にも言い訳できないよなこれからも、と思う。いろんな意味で必見でしょう。そして声優陣、特に種崎敦美が、本ッ当に、素晴らしい……。

全体的に、良い意味で映画製作に慣れてきているのかなというか、「最新劇場長編映画や!これでまた世界を変えるで!」みたいな変な力みがなく、内容的にもスケール的にも、とてもコンパクトな内容だったのがとてもグッと来たし、そこに「日常の中での」まなざしを見失わない誇りのようなものを見て、感動した。かなりの尺があるけれど、学校の外には一歩も出ず、「おはよう」で登校して、「帰ろっか」で一緒に帰ってそのまま終わる、言い換えればただそれだけの内容だったことが、この作品の感動をむしろ何倍にも何倍にも増幅させていたと思う。やさしくて、残酷で、まるで宝石箱みたいな映画です。