Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

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ウラニーノ『naked.』

★★★★★

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マイ生涯ベスト3楽曲「愛してる」が収録された、血を吐くような迫力の傑作アルバム『音楽はあるか』から5年。ワンマンライブも(特に関東圏で)減り、活動のペースも落ちてしまっていたウラニーノが、インディーズ復帰と共に解き放った衝撃の復活作。今回このep『naked.』がストリーミングに登場したので、改めてレビューを書いておきたい。

とにかく、「中年花火」である。

シンプルすぎる不思議なイントロ(これが最後に、ああ、そういうことか、となるから本当にヤバい)から、6分間に及ぶ長い曲の幕は上がる。<おっさん4人で花火をする おっさん4人で花火をする>、ユニコーンの楽曲でないと聞かないような「おっさん」というフレーズの違和感をまずは味わって、一体どんなシチュエーションやねん、と思って欲しい。続く<真っ暗な闇に真っ黒い服の おっさん4人で花火をする>というフレーズは伏線だ。まもなく4人の様子に変化が訪れ、鑑賞者はこの物語で何が起きているのか、何が起きてしまったのかを、知ることになる。

<風もないのにロウソクの炎が揺れている>

そして2番が終わると、更なる大仕掛けが始まり……。

サビだけ聴いてもよくわからない。1番だけ聴いてもよくわからない。最後まで、6分間の最後まで聴くことで、初めてこの曲の全貌が明らかとなる。何度も、何回も、打ち寄せる波のように、胸をかきむしられる感情が次々と押し寄せてくるのだ。こんな体験、音楽だったら、ウラニーノ以外では決して味わえない。

<青木と岡本と吉野と佐々木が花火をしている>

まるで演劇のようだ。ウラニーノがメジャーで活動していたころ、よく使われていたコピーは<文学と音楽の交差点>だった。けれどこの曲については、まるで優れた一幕劇のようなシンプルさ、そしてとっつきやすさがある。あんまりネタバレ書きたくないんだけれど、最後の一行、最後の一行には更にとんでもない仕掛けがあるから、どうか最後まで聴いて欲しい。この小さくて、情けなくて、ほろ苦くも切ない物語を、見届けて欲しい。

<打ち上げ花火を上げよう あの日と同じように/おれたちの友情と 青春の日々と 人生の証に>

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2曲目の「えら呼吸」は、(ウラニーノの初期インディー時代を彷彿とさせる)ビックリ設定な女の子の物語。<脇の下のリンパをなぞるように 襞のように切れてるえらがあるの>ーー。アコギとドラム、たった2パートの緊迫感あるセッションも楽しめる。

そして3曲目の「日陰者」にはくるりのファンファンがトランペットで参加(!)。くるりのトップページにウラニーノの名前が並ぶ俺得な光景も訪れて嬉しかった。以前紹介したことがあるけれど、この曲も「頭から聴いていくと途中で曲の全貌が明らかになり、ハッとする」タイプの歌詞。この歌詞の主役、「日陰者」の正体とはーー。YouTubeにアップされていた弾き語りバージョンを下敷きに、新たに追加されたトランペットのフレーズが哀愁と、主人公の強い想いを鮮やかに描き出している。

2019年には6年ぶりのフルアルバム発表が予告されているウラニーノ。ここからでいい。ぜひここからこのバンドに触れてみて頂きたい。インディロック界の小林賢太郎こと山岸賢介の才能と、世界一人懐っこいドラムを叩く小倉範彦のパワフルなプレイを、知って頂きたい。

『naked.』は主要ストリーミングサイトのほか、オフィシャル通販でもあとちょっとだけ購入することが出来ると思う。

ウラニーノ通販サイト: https://uranino.theshop.jp/items/15729328

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