Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『海獣の子供』

★★★★★

500000億点。


 思わず言葉を失ってしまう映像体験だった。ミクロな日常風景が圧倒的な色彩とグラフィックで描き出されたかと思えば、まるで生きているような海や、水や、細胞が振動してるようなキャラクターたちが凄まじい存在感で立ち上がり、そして物語はやがて命、銀河、宇宙、肉体、時空間にまで飛躍しさらにそれらを超越していく。セリフひとつひとつがもはや物語上の意味を失って、さながら詩のように、呪文のように、鑑賞者に直接語りかけてくる。クライマックスなんて『インターステラー』平気で超えてると思う。日本アニメーション史に残るラスト30分間。もう、どうやって思いついたのか、どうやって作ったのか、ちっともわからない。

過去31年見たアニメ映画の中で、一番絵が好き。背景も、その線の太さも、色彩も、動きも、そしてキャラクターデザインも、その表情も、吸い込まれるような瞳も、全てが大好き。さらに言えば、この映画には宮崎駿も、高畑勲も、細田守も、原恵一も、今敏も、新海誠も、湯浅政明も、(キライだけど)押井守も、そして手塚治虫もいる。監督は劇場版『ドラえもん』の渡辺歩だ。正に100年間の、日本アニメーションの集大成的作品。ちょっとハミ出して令和の公開になっちゃってるのがご愛嬌かな。そういう意味で、新しい時代のアニメーションだなという感覚は意外なくらいない。ある意味そこはこの映画の欠点だけれど、でも生まれた瞬間から古典のような風格がある、エヴァーグリーンな作品だと思うし、だからこそ圧倒的に素晴らしく、神話のように残っていく映画になっていけばいいな。


 この映画の神話性をさらに高めている久石譲の劇伴も素晴らしい。米津玄師の主題歌「海の幽霊」も、単体で聞いたらなんじゃこれだけどエンディングでかかるとたまらなかった。声優だけ、ちょっと苦手だったかな。

<この映画を観た ひとの数だけ 新しい宇宙がうまれる。(松本大洋)>