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「Party Of One feat. Sam Smith」で初めて知った、ブランディ・カーライルのアルバムを借りてみた。(以下の動画はワーナー公式アップの日本語字幕付きです)
単純に、10トラック全てがいい曲。性差別と闘う人々へ<好きに言わせておけばいい/笑い者になるのは、あの人たちよ>と力強く鼓舞する「The Joke」はいきなり圧倒的だし(去年のグラミー賞ノミネート曲で、バラク・オバマも絶賛したらしい)、「Hold Out Your Hand」は楽器構成こそシンプルながらロックそのものの高揚感と力強さで叫び上げる壮大なアンセムで、大好きな曲になった。
そんで、この次の「The Mother」がまためっちゃいい……めっちゃいい歌詞……一行目の<ようこそ、孤独だという思い込みの果てへ>からいきなり凄いパンチラインだし、"母親"になって失ったもの、壊されたもの、そして疎外感を歌いつつも、素晴らしい歌声とことばで、世界中の孤立した母親たちに"魔法の呪文"を授けようとする。
<彼らには今でも朝刊とコーヒーと自分の時間があって/懐疑論とワインで夜を楽しんでいるけれど/私は目にした奇跡を、もう一度見ることができる/あなたの目に映る年月の中で>
<あなたなくして私に成功はない/あの人たちは宝物を抱えて機械に縛られていればいい/私はエヴァンジェリンの母なんだから>
こういうことがやりたい、ぼくは。聴いてほしいな、と思う人がいっぱい浮かんだ……。素晴らしすぎる!
延々書いちゃいそうなので以後簡単にするけれど、この後も、別々の道を選んだ人生へ捧ぐラブ・ソング「Whatever You Do」や、<見知らぬ誰かがあなたのために祈っています>とうたう「Fulton Country Jane Doe」、薬物中毒者に寄り添う「Sugartooth」などなど、あまたのポップ・ソングが、ロックミュージックが、どうでもいい音楽たちが見過ごしてきた「小さき人々」のための歌の数々を、ゆったり、たっぷり堪能できた。そして今更だけどサウンドも超好みだ~。めちゃくちゃいいアルバムです。いろんな人に、いろんな場所に届いてほしいな。こういう日本の歌手がいないんだよな、と思った。世界の、忘れられている人々の隅々にまで、音楽の力が届きますように。