Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

ピノキオピー『零号』

★★★★☆

めちゃめちゃいいね。

ほぼ打ち込みのみに振り切ったサウンドで、“生”そのものへ違和感や過剰な自意識、人間のどろどろした感情を強烈なフレーズで描き出し、歌い上げていく。ほぼ全曲で執拗なまでに韻を踏んでいて、しかもそれが全部エグい内容なのがすごい。歌詞にもあったけれど、こういうのはヒップホップからの影響なのかな? ボカロPにも色々いらっしゃいますが、こんなに人間のグロテスクで生々しい部分をあえて機械音声に歌わせていることのギャップがいつまでも面白く、ぜんぜん慣れないし飽きさせない(当たり前と認識されない)音楽を作る人は他にいない。初音ミクを使う理由がちゃんとあるなぁ、と思う。

アルバムの幕開けにふさわしいダークな「ぼくらはみんな意味不明」、一転してナンセンスな「(Rotten)Apple Dot Com」のシリアスで不穏なコンボはいきなり見事だし*1、「おばけのウケねらい」もアイデアがすごく面白くて、バラード「ヨヅリナ」はウソ言わない範囲のラブソングでこれもとてもいい。……てな具合で(全曲書きそうなのをグッとこらえて)、ハードな内容からあっぱらぱあな曲まで、メロディもトラックも、そして歌詞もキレッキレな内容を堪能できた。やや全曲のアレンジに変化が少ないんだけれど、歌詞にしっかりテーマがあるので、むしろ1枚のアルバムとして強度あるものになっているのもよかった。

そして、タイトル曲「ぜろ」は文句無しの超名曲(MVもファッキン最高)。本作のテーマを踏まえた上で、なお圧倒的な希望と光が降り注ぐクライマックスのカタルシスは凄まじかった。アツい内容と、トラックや"歌声"の穏やかさとのギャップが素晴らしかったです。

*1:動画で貼ってる「アップルドットコム」はバージョン違いで、アルバム収録版とは異なる。