Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

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RADWIMPS『天気の子 complete version』

★★★★

大大大前提として、『天気の子』用の書き下ろし4曲は、曲単体の強度でいえば『君の名は。』の4曲を決して上回ってはいない。しかしそれは、『君の名は。』の時の4曲があまりにも凄すぎたと言ったほうが正しい。00年代~10年代日本ロックの歴史をたった2分半に凝縮した「夢灯籠」、文句無しでラッドのナンバーワンリードソング「前前前世」、そして野田洋次郎の最高傑作バラード「なんでもないや」は、一方で映画『君の名は。』の内容にしっかり寄り添ったサウンドトラックだったかというと、意外とそうでもなかったように思える。その意味で今回の4曲は、単体での“名曲”さではやや前作に敵わないものの、映画『天気の子』のサントラとしては『君の名は。』の時の10倍くらいシンクロ率が高くて、とにかく、そこが良かった。

三浦透子の起用は『天気の子』のさらに前に進んだイメージを見事に音楽面から補強した。あの二人のドラマを「グランドエスケープ」という一言にまとめたセンスも鳥肌が立つほどに素晴らしいし、<夢に僕らで帆を張って>の部分のふわり舞い上がるようなコーラスはクレイジーなくらいにビビットで思わず幽体離脱しそうになる。これから10年間の音楽はきっとこの役割を背負うことになるんだろう、というフレーズを何度も何度もくりかえす、そのものずばり「大丈夫」もドラマチックで力強い一曲。そして『天気の子』が最後に提示した巨大すぎる問いかけに、ひとりの表現者としてアンサーを出した「愛にできることはまだあるかい」は、まさに理想的なエンディング・ソングだろう。

もはや「前前前世」を聴いても『君の名は。』のあの場面を思い出す人はあんまりいないと思うけれど、「大丈夫」を聴けばきっと何度でも、わたしたちは『天気の子』のあのクライマックスを描き出せるだろう。前作とは全く違う役割を持っている意味で、今作もばつぐんの書き下ろし曲たちだった。

ただ、「大丈夫」のmovie ver.で<君にとっての「大丈夫になりたい」>って絶叫するラストにすっげー感動してただけに、今回の完成版で「えっ…そっか…」ってなったヒトは、たぶん、僕だけじゃない。そこも野田洋次郎のキュートさだろ? といえば、そうなんですけどね。