Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

Avicii『Tim』

★★★★☆

名盤……。ジャンルを越えた普遍的な「歌モノ」アルバムの傑作だと思う。

取り繕うことも出来ないほどに、暗く、重く、悲しく、死の匂いがどっぷりとただようアルバムで、その点でも「ここまで!?」と驚いたし、なのにこれほどにも優しく、豊かで、「安全」なところへとリスナーを導き、ひとりぼっちにした上で、困難に立ち塞がり苦しむ人々に寄り添う暖かな音楽になっていることに、深く深く感動した。なんか、BUMP OF CHICKENみたいだ。クリス・マーティンの「Heaven」ですら歌詞はヤバいし、「SOS」とか「Bad Reputation」とか、もはやフェスやクラブでどう踊るのか検討もつかないけれど、間違いなくどん底にいる誰かに、「わかるぜ」って傍にいられる権利を得た楽曲たちだと思う。

上を向いて歩こう」がサンプリングされた「Freak」も破壊的なくらい素晴らしい。日本人ならそのメロディラインにつけられた歌詞も同時に思い描けるわけだから、パワーは2倍以上だと思う。これぞマッシュ・アップだ。全体の曲に言えるけれど、「強い音」があまり使われていなくて、ウッディなサウンドやアコースティックな音色を駆使して、こう、「世界」を作っているところがこのアルバムのすごいところ。悲しいのに、悲しいのに、悲しいのに、どこか安心するような……。

このアルバムはあなたへ声高に「死ぬな!」「生きろ!」とは決して言わないけれど、底の底まで踏み抜いた果てに自分で自分の命を決めることができたAviciiからの、ただ生きているだけで苦しみが続くこの世界への最後の贈り物は、きっとあなたの心をもう少しだけタフにしてくれるだろう。死ぬ気力すら湧かないあなたに、せめてそれくらいの勇気が天使から授けられますように。