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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

★★★★★

総尺、2時間48分。日本アニメーション史上、最も長い映画となった。

2016年版の『この世界の片隅に』に度肝を抜かれ、魂が震え、これほどまでに原作に忠実に映画化されたこと(そして、そのための片渕監督の献身)にただただ感嘆を覚えても――狂信的な原作信者である自分は、やっぱりどこかで「そうはいっても重要すぎる部分が、あまりにも重要すぎる部分がカットされている……でもここを入れると3時間になる……そして2時間にするにはこれ以上最良のカット方法はないだろう……」と諸事情もろもろ2000%理解しつつもずっとひっかかり続けていて、だから、これが、これこそが『この世界の片隅に』なのだ。すず、という人物の真の激情と、そして、リンさんがこの世界(“あの”世界、ではない)で確かに生きていたという証が。だからなのか、今回は冒頭のスイカのシーンでもう涙がぼろぼろ出てしまって、2016年版でも一応あった遊郭の最初のシーンが始まった途端にまた涙が出て、最後、ふたりが共に寄り添うシーンでは嗚咽をこらえきれなくてマスクがびしょびしょになってしまった。ちょっとリンさんに感情移入しすぎだよな……これはこれで失敗だった気もする。もう一回見よ……。

「戦火の中でほっこり、ひっそり生きた(純愛の)プラトニックなお話」として2016年版を気に入った人は、もしかしたら拒絶反応があるかもしれないけれど、この「国」と「家庭」というマクロとミクロの戦争が交差してゆくことこそが『この世界の片隅に』の本質だとやはり思う。幸運にも、まだこれからこの作品に出会うという方は、ぜひこちらのバージョンから見て欲しいな。あと、今こうして海外のアニメーション映画をいろいろ見ているけれど、改めて『この世界の片隅に』ってスゲーな……強度というか、スゴみが違うな、と思っている……。こっちのバージョンのほうが、もしかしたら海外では評価されたかもなァ。