Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

藤生『えりちゃんちはふつう』

★★★★☆

めちゃくちゃ良かった。決して自分自身が経験しているわけではないのに、まるで一緒に遠い遠い記憶を呼び起こされる、ささやかだけど胸を締め付けてくる年少期のスケッチの数々。いま世界が普通じゃなくなってるだけに、世界の片隅のさびしさや悔しさ、暖かさを連想させる物語は余計こころにしみた。すごい観察眼だ。絵もすばらしいし……。そして本の後半へ向かうに従って、「自分の記憶と重なる」ような読書体験から、「“えりちゃん”という特異な人物の半生」へと、物語はゆるやかにシフトチェンジしてゆく。いわゆる「天才」タイプの作家さんなのだろう。6歳や14歳、そして18歳で既に築かれていた強固な「わたし」という意思に、終始圧倒された。こうでありたかった、と思う人も少なからずいるんじゃないかな。幼い日のエピソードにほのぼのとしたい人も、そしてクリエイティブや人間の「狂気」にシビれたい人にもオススメの一冊です。

こういう“小さな”エッセイコミックって、最近だとTwitterで終わらせちゃう作家さんがほとんどだけれど、こうして複数の作品が連作としてまとまった形で(&ページ数も余裕があって)読めると、“さらに”大きな物語が見えてくるのが特にすばらしいな……。/と、作家さんの名前でググっていたらとあるレビューを読んでピーンときた。そうだ、西原理恵子タイプなんだこれは!!(作品は似てないけど感受性が似てる!)