Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

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CHiCO with HoneyWorks『瞬く世界にiを揺らせ』

★★★★★

最高傑作。

ド低音シンガロング・ロックナンバー「決戦スピリット」で幕が切って落とされるチコハニ3枚目のアルバムは、タイアップ付きのシングル曲も、攻め攻めのアルバム曲もしっかり揃った、正にHoneyWorks史上最強の1枚になっていた。とにかく曲のパワーが凄すぎて、もう……。2曲目「ミスター・ダーリン」*1のサビ、<いくつになっても恋させてよアナタに>のメロディ?でなぜかもう泣いてしまう。メロディだけでなぜか泣いてしまうのだよ……。「幸せ。」の、<言葉にできないから 愛を育てて>のメロディとかも何なの……この、shito節全開の最初の3曲で、マジ泣きしてしまった。あったかい涙だった。高校生の恋物語からデビューしたCHiCOが、今ここで夫婦の、そして子どもとの対話を通じて愛を歌っているってのも込みでもうダメ……。泣きすぎて一旦再生を止めてしまったもんここで。はぁ……。

それだけでなく、「ワタシノテンシ」(これはHoneyWorks本隊からのカヴァー曲)で姉妹愛を、「ぐる恋」ではソシャゲの推しへの愛を*2、「胸キュンライト」ではライヴへの愛を観客の立場から歌い上げたり……。「生きている、実在の、身近な、異性、を好きになるだけが『恋』(=ラブソング)ではない」今の時代のダイバーシティを、全く背伸びすることなく等身大で、このアルバムは存在だけで証明している。結成当初から掲げていた「i」のテーマが、今ここでしっかり花開いていると思えた。集大成、って感じはあまりないけれど、間違いなく今回、結果的にそういう曲が揃ったことでピークポイントに到達したと思う。

一方、まさかの全編弾き語りナンバー「私を殺さないで」(チコハニが弾き語りだぞ!!)、そして「乙女ども。」に代表されるような、10代のリスナーへの「負けるな!」「戦え!」「苦しみがいつか宝物になるんだ」というしなやかで力強い、暖かなメッセージの数々は最初から全く揺らぐことがなく、むしろ今までよりもストレートに、さらに直接的に響いてきてるようにすら思える。そして今回、個人的に一番のサプライズだった全編英詩のEDMナンバー「Alive」は、翻訳に突っ込んでみたら、死期が迫る中でクリエイティブに悩む一人の少年の物語になっていて……考えすぎかもだけど、考えすぎてる気がするけど……Aviciiへの哀悼歌なのかなと思ったりとか。全体的に、今回のshito曲は今までのそれらの何段階も上へ行ったイメージ。チコハニはこれまで、どちらかというとGomがブレーンのプロジェクトというイメージがあったけれど、今作については、今までで一番shitoのパーソナルなアーティスト表現が詰まっていたと言えるかもしれない。もちろん、6年分歳をとってお姉さんになった、さらに一歩引いたヴォーカルワークが輝いているCHiCOにとっても。

一方で、HoneyWorksの本隊ではだんだん難しくなっている「生演奏バンドの躍動感」はこちらの方で遺憾なく発揮され、「ぐる恋」なんかはライブのイメージがしっかり湧いてくる。今回大きく飛躍したshito曲を着地させるように、これまでのパブリック・イメージで佳曲を揃えたGomの貢献も忘れてはいけない。この辺り、しっかり役割分担できてて素晴らしいです。

何というか、「綺麗事」の歌ばかりなんだけど、このCDの中では綺麗事がちゃんと息づいている世界を作り上げられている、そういうメッセージを、意志(Will)を持ったアーティストだと思うんですよね、ハニワとは、つまり。綺麗事でも歌おうぜ。ここに愛があることを。

<家族の形変わってゆく/幸せの願い繋いでく>

*1:CHiCOが中川翔子の歌い方に合わせすぎてて聴き分けしづらい……笑

*2:ギバラさんにカヴァーしてほしい。