Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

Taylor Swift『folklore』

★★★★★

テイラー・スウィフトってぜんぜん興味なかったんですよ。「オーヘブンヘブンへブーン」のひと、もしくはEnjoy Music Clubの曲名、くらいのイメージしかなくて。それくらい流行りの洋楽には疎いのですが……。

もう、びっくりするぐらい好みのサウンドで。最初、「アメリカーナ・フォークらしいぞ」くらいの話をどこかで見かけて、ストリーミングでサッと聴いたのですが、あっという間に魅了されてCDまで借りてきてしまった……!

深い深い森の奥、記憶のヴェールの向こう、埃かぶったカーテンの裏側へと誘われるようなサウンド。現代的な打ち込みがリズムを支えるものの、はっきりと目立つのは遠い時間の先から届くような懐かしいピアノの音と、妖精の神話のようなヴォーカル。そして唄われる、いつかの、どこかの、誰かの、静かで切ない物語たち。実際にテイラーが購入した邸宅のエピソードから書いたという「the last great american dynasty」や、白黒の映画のワンシーンのような「exile」……ここからはずっと続けて聴いちゃう。図書館の隅のぶ厚い本をめくっていくような、物語性の強い音楽世界にただただ圧倒され、沼の中に沈んでいくぐらいの体験をしてしまった。すごい、すばらしいアルバムだ。

恋人に「私はあなたに平穏(peace)を与えることはできない。それでもいい?」と語りかける「peace」という曲も、とても深い親愛にむすばれた二人が想像できて大切な1曲になった。昔の誰かのかなしい物語を、とつとつと聴くことは、想像力の、そして、日々を生きることへの何よりのトレーニングなのかもしれない。生きるためのHPがみるみる回復しました。この原稿を途中まで書いたところで、本アルバム『folklore』がグラミー賞を獲ったって話まで入ってきたぞ。やっぱり、どの世界でも、心の中の森で流れる音楽ってどこかで似ているのかもね。