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キホン、このバンドの曲は、一つ残らず突き刺さる。だって命くらい大切なバンドなので。だけれど、時々、そんな中でも、さらに“今”の自分にめちゃめちゃシンクロする曲が絶好のタイミングで発表されたりして、本当に、ビビり上がることがある。藤原基央は、たぶん僕の部屋のどこかにNINJAのようにひそんでいて、僕の曲がった背中を見ながら歌詞を書くことにハマっているのだろう。なんて悪趣味な男だ。
まず、一行目から、これだぜ。
<もう一度起き上がるには やっぱり
どうしたって少しは無理しなきゃいけないな>
まだまだ続く。
<自分にしか出来ない事ってなんだろう>
<何が許せないの 何を許されたいの
いつか終わる小さな灯火>
<何回もお祈りしたよ 願い事
どうしたって叶わなくて 諦めてしまった
忘れやしないけど思い出しもしない事>
<昨夜 全然眠れないまま 耐えた事
かけらも覚えてないような顔で歩く>
<壊れた心でも 息をしたがる体>
最初、<どこにいたんだよ ここにいるんだよ>と唄われる歌詞は、最後、<どこにいるんだよ ここにいたんだよ>と変わる。最初はちょっと意味が取りづらいんだけれど、何度も聞き込んでいると、突然見えてくる景色がある。そうだ。<ここにいたんだよ>に変わるのは、主人公が交差点の向こうへ既に歩き出しているからなのだ。交差点の向こうには、ぐっすり眠れる夜も、楽ちんに起き上がれる朝も、自分だけの命の役割も、いつか手から零れ落ちてしまった落とし物も、何ひとつ待っていてくれはしない。
答えも、救いも、希望も、ない。何もない。それでもわたしたちは繋ぐのだ。「とりあえず」明日へ。とりあえずは、せめて、交差点の向こう側まで。孤独だ。不安だ。心配だ。何ひとつ状況は変わらない。そう、変わらないんだぜ……どんなに頑張ったところで。だから、大丈夫なんだ。
<あなたのための月が見えるよ>