Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『アイの歌声を聴かせて』

★★★★☆

めっちゃいい!! 青春映画の、そして和製ミュージカルの新しいスタンダードだと思う。

とにかくずば抜けて素晴らしいのが“キャラクターたちのハーモニー(調和)”で、それぞれ悩みを抱えながらもぶつかり合う高校生たちのダイアローグが、立ち振る舞いの演技が、ドラマが、とっても生き生きしていて、瑞々しくて。もちろんホン自体もいいんだけれど、(狭い意味の)アニメーションの技術とはまた違う、いわば「お芝居の見事さ」がとにかく最高。もちろん『イヴの時間』でも僕をメロメロにさせたのはそんな演劇的カッコ良さだったわけだけれど、まるで大人の演劇から高校演劇へと転換したような、しかし『アルモニ』の時とはまったく違う、ある種のキラキラした部分がこれまでの全てのモヤを晴らしている。これは変身だと思う。控えめに言って、ファンタスティック!!!

無駄のない、脇道に逸れないシンプルな物語運び、笑えるアイデアの数々とその巧みさ(「〇〇に何度も間違えられる〇〇」が伏線だったのはひっくり返った)、好きになるしかないキャラクターデザインも素晴らしい。「高校生が主役のアニメーション映画」というレッドオーシャンを最後まで泳ぎ抜くオリジナリティもしっかりある。後半のどんでん返し自体はすぐに読めちゃうのでサプライズはないけれど、けっこう自分も昔からテーマにしているメッセージなのでシンパシーを感じたし、その描写は暖かく、力強かった。

なので、本当は、その「高校演劇感」に最後まで浸らせてほしかった気持ちもある。あれだけ素晴らしかった『天気の子』でさえ、そうだったけれど、「アニメーション映画だから」「クライマックスは盛り上げなきゃ」で、とってつけたようなハリウッド的サスペンス(やアドベンチャー)が用意される必要なんて本当にない。もっといろんな可能性はあったはず……特にこういう物語であったならば尚更。けれどそこは、単なる僕の好みもあるだろう。また、ポリコレの話になるけれど、お母さんのあの描写はもう少しだけ配慮されても良かったかもしれない。あそこまで描かなくても伝わるので。

しかしホントに、ただただシンプルに“お話がいい”ので、これ、例えば実写映画になったり、「青春アドベンチャー」枠でNHK-FMでやったり、パルコ劇場とかで興行したり、そして何より、これを高校演劇で観たい!! シナリオ的には工夫次第で何とでもなると思う。そう、これはあくまで“初演”だ。「一つの媒体」から抜け出して、もっともっと色んな“回線に”溶け込んでいって、みんなの心に「名作だねぇ……」って生き続けますように。