Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

藤子・F・不二雄『未来の想い出』

★★★☆

Twitterで見かけて気になり、読んでみることにした藤子・F・不二雄晩年の作品。筆者そっくりの境遇だが、落ちぶれてしまった設定の漫画家がタイムリープして過去をやり直そうとするSF作品になっている(いわゆる藤子Fの「SF短編」ではなく、単行本一冊サイズ)。

たしかに面白かったけれど、マァこれは大長編ドラえもんとも共通するのですが、ラスト十数ページのまとめ上げ方が急で……(笑) オチの付け方は星新一、オチ以外は叙情的な「中年の危機」ストーリーで、前半の哀愁あるノスタルジックなしっとりムードがめっちゃ好きだったので、展開はいっしょでも最後までその雰囲気で読みたかった気がした。意外にシニカルな一面と、それ以上にやっぱり、優しい世界と時間が広がっているところは見事です。見事ですというか、こういう「どう描いても“優しく”なってしまう」自分自身から逃げなかったから、藤子・F・不二雄はこの物語の主人公と違って死ぬ間際まで最前線を保ち続けられたんだろうな。いろいろジンワリ考えさせられてしまう作品でした。