★★★★☆
これはすごい！ イケメンでインフルエンサーで非の打ち所がない「シャイニーゲイ」・向井くんにムカムカしまくるゲイ、そして彼にいろんな意味で（羽虫のように）引き寄せられていくクラスメイトたちを描いた群像劇。彼を排斥したいと思っている側がマイノリティの孤独を抱えてしまうという逆転現象……のように見せかけた「本当に今、起きていること」が巧みに描かれていく。ある意味でゲイの話もLGBTの話も1ミリもしていなくて、いつの時代にもあった「正義の定義」や「カッコ良さ」、「マイノリティの苦しみ」、「正しさという暴力」、そして「優れた思想に触れること」……その壁に立ち向かう悦びと苦しみ、そしてクソッタレな世の中を全力投球で描いた快作。
＜考えても見てよ／今の時代 忌避され蔑まれるのは…どっちだと思う？／ゲイをバラされた少年と その秘密をバラした少年…／答えは火を見るよりもあきらかだろ？＞
それにしても、こんなにブレがなくテーマと時代にピントを合わせることってできるのか？ 雲ひとつないピーカン照り、どこまでも晴れ渡った、そして晴れ渡ったまま（ネタバレ→）*1、なんかそこすらも読んでいてとにかく気持ちがいい漫画。上下巻という短さで走り抜いているのもとてもグッド。どれくらい最初から計画していたのかわからないけれど、行き当たりばったりに思えるくらいの転がりっぷりを見せるのもまた痛快です。ある意味情緒もへったくれもないTEDみたいな作品ですが、時代を切り替えるようなパワーがみなぎっている。この無遠慮でサイコパスな感じがキライかハマれるかは好みが分かれそうですが、もっと話題になっていい気がするな……！
*1:思いがけない邪悪と破滅へとなだれ込んでいく…
