Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

東京カランコロン『5人のエンターテイナー』

★★★★

Wikipedia読んだらびっくりしたけれど、前作『We are 東京カランコロン』から僅か9ヶ月(!)で発売されたらしい2枚目のフルアルバム。しかもそんな短期間なのに、『We are〜』とは比べ物にならないくらい良かった。

1曲目「誰かのエンターテイナー」でいきなりアカペラからバンドとしての在り方を宣言、2曲目の「マッハソング」はパッと短くバンドの疾走感と初期衝動を詰め込んで(ここで二人のソングライター、いちろーとせんせいの曲が交互にくる構成もいい)、そして3曲目にリードナンバー的アンセムをぶち込む曲順は大胆不敵! 「指でキスしよう」でロマンチックなラブバラードを奏でれば、「true! true! true!」ではバンドらしいヒネクレロックを魅せつつ鑑賞者とのコミュニケーションもはかる。

「これシングルだったんだ……」と驚くクセモノ「16のbeat」では<ややこしいアレンジ、難解なフレーズ、僕にぴったりだ>と「誰かのエンターテイナー」とあえて真逆のアプローチで呼応させるように歌いあげ、この<ややこしいアレンジ、難解なフレーズ>をJ-POPへと昇格させる「J-POPって素敵ね」も見事な曲だし素敵な流れだなと思った。ちょっと迂回しましたが、自分が東京カランコロンをしっかり聴く前の「なんとなくの東京カランコロン」のイメージそのままな、かなりグッドなアルバム。名盤『東京カランコロン01』へ繋がる流れが見えてきた感じがします。

東京カランコロン『We are 東京カランコロン』

★★★

インディーズの1stかな、と思って後で調べたらメジャー1stだった。バンドの楽しさが伝わってくるアイデアの数々は面白いけれど、やっぱり聴き通すとあんまパッとしない……。「青き日々よ」と「xゲーム」はその後の作品っぽくて良かった。ユーモアがあるバンドなんだな、とか、楽しいしツインボーカルも素敵だし音にクセがあるのもいいなぁ! とかはもちろん思うし、この1枚しか聴いてなかってたらもうちょっと"買ってた"かもしれないけど……やっぱこの後の作品で大きく飛躍することを知ってしまっていると、ね。

Various Artists『IMAGINATION vol.2』

★★☆

うーん。

わかる人にはわかる、そこそこ豪華なメンバーによるコンピレーション『IMAGINATION vol.1』の続編。ちょこっと前回より「豪華」感は落ちたラインナップになってる反面、「歌える」人の割合が増えているので、CDとしての聞き応えはこちらのほうが上だった。前回はトラックメイカーのアレンジが全面に出たアニソンカヴァー集だったことに対して、今回はしっかりしたカラオケトラックでJ-POPのガチンコ勝負、とコンセプトが大きく違うのも決して悪くないアプローチ。ただ選曲が、モー娘。中島美嘉the brilliant greenELT松浦亜弥、「ハナミズキ」……と、多くが20年前の「歌姫時代」な、既に色褪せ始めているそのまんまのヒットソングばかりで、なんつーかさ……「夏祭り」とか「小さな恋のうた」はまだ分かるんだけどさ……いや、このジャンルに自分のフックがないだけなんだろうか……。率直に、ベタベタすぎる選曲が疑問だし(曲そのものというより、「このへん」を選んじゃうセンスの問題というか)、そもそもこれらは懐メロなんだから、本人の歌唱以外に需要ってあるのかな……僕が知らないだけなのかな。今「fragile」とか最新のトラックで聴いても、歌うまいなぁAZKi、以外に自分は感想が出てこなかったです。なまじ『Vol.1』より聴いたことのある曲が多かったので、そう感じたのかもしれない。前回の「良かったところ」と「もう少しいけたところ」が、悪い意味でそっくり入れ替わってしまったかナ。

ピノキオピー『零号』

★★★★☆

めちゃめちゃいいね。

ほぼ打ち込みのみに振り切ったサウンドで、“生”そのものへ違和感や過剰な自意識、人間のどろどろした感情を強烈なフレーズで描き出し、歌い上げていく。ほぼ全曲で執拗なまでに韻を踏んでいて、しかもそれが全部エグい内容なのがすごい。歌詞にもあったけれど、こういうのはヒップホップからの影響なのかな? ボカロPにも色々いらっしゃいますが、こんなに人間のグロテスクで生々しい部分をあえて機械音声に歌わせていることのギャップがいつまでも面白く、ぜんぜん慣れないし飽きさせない(当たり前と認識されない)音楽を作る人は他にいない。初音ミクを使う理由がちゃんとあるなぁ、と思う。

アルバムの幕開けにふさわしいダークな「ぼくらはみんな意味不明」、一転してナンセンスな「(Rotten)Apple Dot Com」のシリアスで不穏なコンボはいきなり見事だし*1、「おばけのウケねらい」もアイデアがすごく面白くて、バラード「ヨヅリナ」はウソ言わない範囲のラブソングでこれもとてもいい。……てな具合で(全曲書きそうなのをグッとこらえて)、ハードな内容からあっぱらぱあな曲まで、メロディもトラックも、そして歌詞もキレッキレな内容を堪能できた。やや全曲のアレンジに変化が少ないんだけれど、歌詞にしっかりテーマがあるので、むしろ1枚のアルバムとして強度あるものになっているのもよかった。

そして、タイトル曲「ぜろ」は文句無しの超名曲(MVもファッキン最高)。本作のテーマを踏まえた上で、なお圧倒的な希望と光が降り注ぐクライマックスのカタルシスは凄まじかった。アツい内容と、トラックや"歌声"の穏やかさとのギャップが素晴らしかったです。

*1:動画で貼ってる「アップルドットコム」はバージョン違いで、アルバム収録版とは異なる。

LIP x LIP『どっちのkissか、選べよ。』

★★★☆

Honeyworksが展開する新しいユニットのフルアルバム。実際の歌唱は(キャラクターを演じる)内山昂輝島崎信長が務めている。

やっぱり始まりの「ロメオ」がなかなかの名曲で、それ以外の曲でも、shitoの規格外にポップなメロディセンスを存分に堪能できる。「ロデオ」もかっこいいし(CHiCO×sanaのほうが好き!だけど!)、「小さなライオン」もshitoらしさがよく出た佳作。「必要不可欠」はRADWIMPSオマージュ(というか桑原オマージュ?)なロックナンバーだった。ただ今作については、大部分の曲で歌詞が似ているというか、コンセプトがそうなので仕方ないけれどそこがちょっと引っかかった。やや俯瞰しすぎた、メッセージ性の強い歌詞がほとんどなのも理由かな……。あるいは、ユニットのキャラクターを意識しすぎているのかな。一番攻めてるのが結局「ロメオ」な気がしちゃった。「小さなライオン」くらい遊んだ曲がもう少しあると良かった。

BBHF『Family』

★★★★

『Mirror Mirror』から僅か4ヶ月でリリースされた今年2枚目のミニアルバム。インタビューによれば、もともと同時並行して作られていたらしい(ただし前作は配信限定で、今作はフィジカルも同時リリース)。

前作から一転して、バンドが「せーの!」で奏でる躍動感とギラギラまぶしい希望が音楽から伝わる、すごい熱量のアルバム。『Mirror Mirror』の冷たい緻密なサウンドもすごく好きだったので、最初はちょっと戸惑いもあったけれど、これも好き。めちゃくちゃエモいです。そして歌詞が非常に興味深くて、多くが「君」と「共にあり続ける」ための困難を歌った内容だったのがユニークだった。より生活に密着した、「続けてゆく」ことの難しさを歌っている点でいえば、恋人というより夫婦の物語なのかな。と思ってここでアルバムタイトルに気づいた。ああ!『Family』か!