Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『泣きたい私は猫をかぶる』

★★☆

いやぁ、やばいでしょうこれは……。途中まではまだしも、ラスト40分で気持ちがズルズル落っこちた。一体いつの時代のアニメなんだろう、これ?

前半。そんなに整理されたプロットではないけれど、生き生きしたセリフやキャラクターが物語をしっかり彩り、引っ張ってゆく。この辺りは脚本家の力が大きいと思った。アイデア一発勝負の淡白なシナリオを、濃ゆいキャラクターや芝居でカバーしていて、さすがという感じの言い回しの面白さ、会話の軽快さが光っていた。そしてもちろん素敵なアニメート、息遣いを感じる背景美術がそれを支えている。シリアスな話にわざと突っ込んでゆかず、独特のゆる〜い空気で流して進んでいくのも、個性的だった。

ところが……絶妙にピンチ度が上がらないままだったシナリオを、わざと急展開させようと突然始まる冒険活劇に唖然としてしまった……。まったく伏線なし、設定ガバガバ(あの中に四足歩行の猫が混ざったらそりゃ誰か突っ込むべきだろ)の異世界がドンドンと展開し、キャラが一体どこへ向かって走っているのかも終始曖昧で、男の子は急に叫びまくってキャラ崩壊だし、「なぜ姿が戻る、戻らない」の境目も恣意的であいまい。そして既視感しかない一連のシーケンスは、見ていて嫌なさぶいぼが立つほどだった。そもそも、肝心のテーマとこれらのシーケンスがぜんぜん噛み合って感じられない。イメージボード描いたら全部使わなきゃってことじゃないと思うし、こういう冒険活劇がアニメ映画には「いる」よね、みたいな判断があるとしたら一体全体誰の仕業なんだ。ていうか現代劇と、最後の世界の追いかけっこ、作り手が本当にやりたかったのはどっちなんだ……。

だいたい、「ペラペラ喋るデブネコ」「夏祭りの夜」「なんかすごい大きな木」「異世界へは鳥居をくぐる」「灯籠がぶら下がった街」「ステンドグラスっぽいのがキラキラしてる神殿」「最後は肉弾戦」とか、良く言えば東映オマージュな手垢ベッタベタのモチーフを、一体どういう判断が下りればジャンジャン使いましょうってことになったんだろう。百歩譲って別に使ってもいいとして、これではただドメスティックな連続性をなぞっているだけで、他のものがない。まるで、ではなく、そのものずばり化石のような映画。いま予算と人員をかけてこれを送り出そう、という“何か”がぜんぜん見えない。声優さんだけ新しい! って話なら、昔の作品を吹き替え直せばいいじゃん。

現実に戻ってからのドラマ、という超肝心な部分をエンドロールで処理してたことにも愕然とした。わりとそれなりに前半は展開されてたのに!? ていうかここまで思いつくかぎり羅列しちゃったけれど、心の動きみたいな所も終盤ぜんぜん消化できてないからね!?

日本の劇場アニメって、もはや8割の部分が内容ほぼ一緒で、残りの2割でいかに工夫するか、みたいな(ソシャゲ的な)戦いになりつつあると思う。その点この映画は、前半はその「残り2割」でそれなりにオリジナリティを出せていたと思う。けれど、いくらなんでもこれは事故。なんでこんな大量に文章書いてしまったんだ。貶めたいのではなく自分の中の危機感です。まだ頭の上のサイレンが赤いままピーポー鳴ってるわ(ツインエンジンさんお仕事いただけたのにすみません……)。

劇場スルーにしてNetflixに変更した判断って、もしかして、そういうことだったのかな……劇場公開だったらレビュー炎上してたよなきっと……。