Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『失くした体』

★★★★★ 

ぶっちぎりの傑作。界隈では“超”がつくほどの話題作だったので「あ、ジェレミー・クラパンですよね?見ました見ました!」って話を合わせてウソつかなきゃいけない状況が来ないかビクビクしてたけど、これでもう安心です(だってNetflix入ってなかったんだもん……)。そしてこれは、ほんとうに、傑作だった。これは傑作ですよ!!

確かに、「切断された右手が病院を脱走してパリの街をうろつく」というのがプロットなのでそこは間違いではないのですが、このあらすじから想像するアートな映画〜! という印象はごくごく一面でしかなく、開始1分から急激に高まるサスペンス、次々に出てくる見たことのないアクションシーン、そして並行して展開される(広義の)ミステリー、圧倒的に美しい街の風景ーーと、素晴らしい緊張感や映画的な興奮に満ちた前半はワクワクが止まらなかった。めっちゃくちゃエンタメだし、「映画」してるし、もうそこから香ってくる「見たことのない」「傑作感」が半端ない。

そして中盤から展開されてゆく小さなラブ・ストーリーも実に見事で、そこからまたドン底に突き落とされて……。いくらそんな背景があったところでアンタそれはダメダメだよ、というダメダメっぷりから、それでも前へ進むことを決めた主人公の朝日への咆哮には鳥肌がぞくっと立った。すごいカタルシスだった。まばゆいほどの、希望の映画だ。

誰も思いついたことのない切り口で現代の街を美しく強く描き、社会の片隅の人々をドラマチックに描く……なんかフランスの新海誠だな、この人。

調べたところ原作がある作品とのことなので、これがオリジナルだったらもっとすごい達成だったなとだけは思った。そしてこの映画を、広く「アニメーションを次の時代へと進める作品だ」と捉えられるかどうかが、今の世界に問いかけられているなと思いました。しっかりバトンを受け取って、前に進んでゆきたい。

しかし『この世界の片隅に』も『手をなくした少女』もコレも、ぜんぶ「手」なの、ほんとすごい。何なんだこの「手」ブーム。邦題が全然魅力的じゃないのが残念だな〜(この辺がNetflixの弱さかもですね)。