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音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

HoneyWorks『好きすぎてやばい。』

★★★★

HoneyWorksの3年ぶり、メジャー5枚目となるアルバム。2枚組、全24曲というフルボリュームだ。

一番大きな変化は、3年前はまだなかった「アイドル」のストーリーが入ってきたことだろう。10代の「ふつう」の少年少女たちの物語に、ステージの上で歌い踊る華やかなショウの世界がバリエーションとして加わった。1曲目の「ヒロイン育成計画」からshitoのどポップなセンスにタコ殴りにされていきなり最高。「生意気ハニー」の、ゆっくり歩んでゆこうとする若い二人の物語も素敵だし、「選んでくれてありがとう。」のまさかのカントリー調アレンジも……ああ、ほんとにshitoすげえなと……。

ディスク1のハイライトは「レンズ越しの景色」。どの物語からも独立して描かれる切ないストーリーは、イラストレーターのヤマコが初めて作詞を手がけたことで生まれたみたい。かなり大きめに想像の余地がとられた内容になっていて、わりと細かく描写している他の曲からいい意味で変化があった。この曲はメロディもいい!これもshitoの筆です。なんたる才能だろう!

shitoの曲ではないものだと、ポップで軽快な「ワタシノテンシ」や、チコハニとも微妙にニュアンスが違うロックナンバー「ラブヘイトマジョリティ」が良かった。ま、これまでのアルバムと楽曲が重複していたり(その後の曲の導入にするためなのだが)、唯一のガチ歌手であるこいぬの歌唱力だけずば抜けすぎていたり(またシンガーさんが歌ったCDも聴きたいけど、もう無理なのかな……)、こうなっちゃうんだろうな、と思える部分もあるにはあったけれど……。

でも。正直マヌケだな、と思ってたアルバムタイトルが「そこから取ったの!!」と気づけた時の感動とか、「また『東京〜』シリーズねぇ……」とタカを括ってたら「恋が迎えた「秋」」を描くことで全ての曲よりも一歩先の景色を見せ、見事にアルバムを締めくくった「東京オータムセッション」のフィナーレとか……*1、相変わらず「詩」として、表現として込められた仕掛けやメッセージひとつひとつにばっちり心を打たれてしまう。やっぱり追いかけていたくなる、何というか、不思議なアーティストだ。どうしてこんなに好きなんだろうな。で、「どうしてこんなに好きなんだろうな」と考えるような人には、きっと波長が合う音楽たちなんだと思うんだよな。

*1:MVは正直、歌詞に合っていないかなと思った……幸せを描いた内容ではなくて、もっと悲しくて切実な内容のほうが曲のテーマに寄り添っていたんじゃないかな。