Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

戸田誠二『WOMAN』

★★★★

タイトルこそ『WOMAN』と銘打たれているけど、深く女性に切り込んだ内容ではなく、わりといつも通りの戸田誠二の作品集。これを読んでて思ったんだけど……なんか、自分が定義したい「男性的」な感性って、意外とこういうのな気がするんだよな。この場合の「男性的」は、ジェンダー上の男性にも女性にも(たぶん等しい量で)どちらにもあるものを指していて……自分もまだよく言語化できませんが……「男性的」だと語弊があるので仮に「A」の感性として、なんかこの辺りが「A」のニュートラルだよなというか。いや、本当の「ニュートラル」ではないんだけれど、もし「A」というギアがあるとしたら、ここが「ニュートラル」、な感じ。ドライブでも、バックでも、パーキングでもなくて、ニュートラルの「A」。だから、本作みたいに女性にも重ねて読めるのだと思った。もうこれ感想じゃなくて自分の思考メモだけど……(ま、そういうブログなので!)。

佐久間結衣『わるいおんなのこ』1〜4

★★★☆

素晴らしいデビュー作『コンプレックス・エイジ』を世に放った佐久間結衣の2作目となるオリジナル連載作。が、途中に虚淵玄のコミカライズ作業を挟んだから(?)か、前作から一転した超エログロ作品になっていてビックリ。「百合物語」と銘打たれてるけど決して今時の「百合」を指してはおらず、もっとゴシックで古いほうの「百合」が意識されていて、全体的にどこか懐かしい手触りがする少女マンガ(いや、ジャンルは青年漫画だと思うけれど……)。筆者のもつロマンティックな感性がたっぷり注ぎ込まれていて、そこは読んでいて気持ち良かったけれど、そんなに楽しめたかと言えば正直ドライな感想しか浮かばない。すごいことが起きているのでしょうが、全てにあんまりついていけなかった。一概にダークなネタがダメではないんだけれど……。

相変わらず素晴らしいのは迫力ある肉体表現や絵画センスで、どしんと重たい肉体が蹂躙され屈服させられてゆくさまはおおいにサディズムを刺激された。けどそれが物語を読むカタルシスにまでは繋がっていなかったかも。ラストもちょっとごちゃごちゃだったかな。

志摩時緒『ぼっちな僕らの恋愛事情』1〜2

★★★★

「2人が互いに意識するきっかけ」が、「夏休み明けたらクラスメイト全員に彼氏・彼女ができていたから(=2人だけ「ぼっち」になっていたから)」という……もう逆によく思いつけるよなというか、いや百歩譲って思いついてもよく実際に描くよなと…… 笑 人間がどれだけ周囲からの環境に弱いのか、という点もしっかりシナリオの核に反映されていて、ニヤニヤしながら読みました。繊細かつ重層的な心理描写があるわけじゃないけれど、これはもう、一種のエロ本なので……。

志摩時緒はとてもえっちなので好きです(直球)。他の同著作品と違って具体的なシーンがあるわけではないけれど、やっぱどえっちなんですよね。この感じ伝わるかな……。

ふせでぃ『明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。』

★★★☆

絵がかわいい。テンプレ以上に深く掘るような心理描写はあまりないけれど、いい意味でサラッと流し読める孤独な女の子の物語でした。これはこれで令和っぽいというか、ある程度定着してきた(主にジェンダーが女性側からみる)「かわいい女の子」像の一つなのかもしれない。次はポスト・コロナをテーマにした恋愛漫画も読んでみたいな。/最後の3ページだけ急にInstagramみたいなマンガになってちょっと笑った。きっと普段はこっちがメインフィールドなのだろう。でも、SNS発でこういう長い漫画も描こうとがんばる作家さん、個人的には応援したいな。

峰浪りょう『少年のアビス』1

★★★★☆

『ヒメゴト』、『初恋ゾンビ』の峰浪りょう最新作。またしても移籍して今度はヤンジャン。満をじして……というこちらの期待感をさらに何倍も上回る、すさまじい第一巻になっている。

暴力を振るう兄、認知症を患う祖母を女手ひとつで介護する母、そして食い物にされている地元の同級生からがんじがらめにされ、地方都市で静かに沈没している主人公。情死の舞台となったらしい川を橋の上から眺めながら、小さな希死念慮を浮かばせる彼が出会ったのはーー。

<僕の死(いのち)が 始まる>という強烈なフレーズに痺れる。そうだ、いのちとは「死が始まる」ということなのだ。繊細な心理描写、チラッと見え隠れするユーモア、そして静かな展開とギャップをみせる、読む者を掴んで離さない驚きのストーリー展開の連続。『初恋ゾンビ』だけ読んでた方には違和感があるかもしれないけれど、ああ、本当はこんなのをやりたかったんだな、と思わせる生き生きとした物語の躍動、シックだけど情熱的なテーマ、そして映画的ドラマチックさには胸がギュッと締め付けられる。ただただ素晴らしい! 2020年最大注目作の一つだと思う。いや、そうなってほしい。ここからどこまで沈み、そしてどこまで昇って行くのか……否応なく昂ってしまう第一巻です。今のうちに、読んでおきましょう!

さあ京アニ、次は、これだぞ。