Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

犬上すくね『恋愛ディストーション』1

★★★★

短編集『想うということ』が鮮烈だったので、手を出してみた犬上すくねのシリーズ作品。それなりにありふれた二組の若いカップルを主軸に、互いの日々の摩擦や変化を軽やかに描いていく。とにかくこの「においたつ日常感」がなかなかスパイシーで、なんか読んでいて強烈に思い出したのは、大学の頃、居酒屋で、同級生のこの子とこの子が付き合ってるんだよ〜って指差して教えてもらって、へぇ、そうなんだ、って返したときのなんとも言えない不思議な感情、すこしだけ想像したその二人が二人きりの時のこととか、でもそれは一生知りえないことだなと思ったりした、なんかその頃の自分がぶわっと蘇りました。それくらい、「特別な人とはとても思えない、ありふれた自分の知り合いの範囲内における」カップルの時間がリアリティをもって、そしてコミカルに描かれていて、非常に「小さな」作品なのですが、長く愛された理由がわかった気がしました。

「いいよ、つけなくても」から始まる一連の小話で、最後「おさがわせしました」って小さく返してるところがかわいい。この温度感(最近のオタク用語で言うと、「質感」ってやつ)よ……。