Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『記憶にございません!』

★★★★

そういえば「映画の三谷幸喜」って、こうだったなぁ。誰も傷つかないハッピーなヒューマンコメディの佳作。

真田丸』が自分の中でとても重大な作品だったので、「それ以来」になる三谷作品に期待値が上がっていた。ただ、あの「鬼気迫る」三谷幸喜ではない、そういえば『ラヂオの時間』も『有頂天ホテル』も『ステキな金縛り』もこうだった、と改めて思い出したような上質な「たのしい映画」になっていて、いい意味で(勝手に)裏切られた感じ。絶妙なのが「日本国」を「ほんのちょっと」だけズラして舞台設定がなされているところで、全員ガラケーしか使ってなかったり、麻生太郎のファッションや小泉進次郎のそっくりさんを露骨に入れつつもそれ以外からはむしろ「昭和」のニュアンスを出していたり、蓮舫? って野党党首が実は×××だったり、国会のデザインもちょっと違ったりするあたりから、「うそっこコメディ」感をしっかり醸し出して、鑑賞者をこの世界に没頭させてくれる。主演の中井貴一は素晴らしく、ニコ〜ッと笑うあの「政治家」感も、ピュアで初心に燃える「真人間」感もどちらもひとつの人格に共存させていて、すごく映画的なキャラクターだと舌を巻いた。ほんとに、いろんなもののバランスが良くて、しっかりエンターテインメントで、いい意味で全部が軽くて(もしくは「軽やか」で)、午後9時からおやつ片手に家族でテレビで見たらこんなにいい映画はないなって思った……映画館で見たことを後悔しているわけではなく、心からの敬意を込めて、そう言いたい! /そして、これこそが「風刺」であって、これを「ヌルい」から風刺じゃないって思う人がいたとしたら、それはちょいとSNSや自分自身の毒に毒されすぎているかもしれないよ、って思う。実写映画を見ること自体、ものすごく久しぶりな経験だったので、とてもいいリハビリになった……。