Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

ネクライトーキー『FREAK』

★★★★★

こんどのネクライトーキーは、泣ける。

超名盤『ONE!!』、やや息切れ感のあった『ZOO!!』以来になるネクライトーキー3枚目のオリジナルアルバム。前作からすこし垣間見えていた「しっとりした」面、そして『ONE!!』の時の魅力の一つだった「さびしい」ところ……この2つが徹底的に掘り下げられた、とにかくせつない、せつない、エモーショナルで感動的なアルバムに仕上がっている。

コロナ禍でライブが飛んだ中、じっくりと書いていった曲が中心にRECされたみたいで、フラストレーションをぶっ飛ばすような軽快なナンバーにも、轟音ひねくれロックチューンにも、そして今作で僕の涙腺をぶっ壊した数々のバラードナンバーにも……どうしようもない悲しさや寂しさが織り込められているのが素晴らしい。ジャズ風味のアレンジが軽快にアルバムを立ち上げる「気になっていく」、これぞネクライトーキーって感じの「はよファズ踏めや」、そして前の曲から続くような激しいノイズの楽曲……かと思いきや、とんでもないピアノバラードの大名曲「大事なことは大事にできたら」が演奏される。この曲は紛れもない前半のハイライト。<嫌いだからみんな死ねばいいんだ、と/そう言えないほど丸くなれたよ>という歌詞に込められた、だけどそう言えないくらい丸くなりたくなかった、でも丸くなれてよかったとも本当に思うんだ、でもそれはそれとして、この気持ちはどこへゆくのだろう、と、変わりゆく窓の外を見れば、そこには化け物が立っていて、ああ、あいつにも<優しくできたら>……。

どうしようもなく自分が弱っていく、昔ほど感情が動かなくなっていく、なぁなぁと日々が過ぎ去っていく、どこかの過去でいたはずの自分に取り残されていく……インタールード的に「思い出すこと」がピアノ1本でせつなく景色を歌い上げると、<嘘も要らないほど強い人になれたら>=嘘が必要なくらい弱い自分、が、それでもこの道を前に進んでいることを高らかに歌う先行シングル「続・かえるくんの冒険」が行進曲のように始まる。『ONE!!』の頃とも、『ZOO!!』の時とも違う、才能と勢いで走ることができた日々ではない、本当に血反吐を吐きながら傷から血を流しながら地べたに這いつくばりながら、根性と意地*1で作り上げたオトナのアルバムで、そこにめちゃめちゃ感動してしまいました。最後の「夢を見ていた」もイキな仕掛けのある見事なフィナーレ曲。

もちろんポップな「俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ」や「カニノダンス」、「Mr. エレキギターマン」も効いています。僕が住んでいた町が「豪徳寺ラプソディ」で歌われたのも、なぜ豪徳寺なのかはイマイチよくわからなかったけど嬉しかった。奇妙なゾウガメのタクシーはいるよな確かに。僕も駅前で「乗られますか?」って何度か聞かれた気がする。

*1:いや、すべては実力なのだが!