Wi-Fi飛んでる? 神さまって信じてる?

音楽・マンガ・映画・その他 いろいろ感想をメモしておくブログです。

『あの夏のルカ』

★★★★

執筆時点*1でのピクサー最新作。イタリアの海を舞台にしたサマー・ジュブナイル・ムービー。

……と、こうして半月くらいの間に2つのスタジオのアニメーション映画を14本も観てきたわけですが、それらと比較しても、飛び抜けているほどに異色で異質な作品。これまでも「メキシコを舞台にした」とか、「東南アジアをモチーフにした」とか、そういう作品は数々あったわけですが、いずれも「ディズニー的な、ピクサー的な、あるいはアメリカ的な」ものにそれを巧みに落とし込んだのち形にしていて、つまりある種のローカライズが必ずなされていました。しかしこの映画は違う。単にデザイン、ロケーション、文化、あるいは思想の部分だけでなく、キャラクターデザインから、動き(アニメート)、構図の切り方、色彩、(広い意味の)絵作り、そしてテンポ感に至るまでめちゃめちゃ「アメリカじゃない」んですよね。「スタジオジブリの宮崎監督から大きな影響!」みたいな、インタビュー記事の見出しだけは目に入っていたので若干それも意識はしたのですが(「ポルト・ロッソ」という地名、朝はトランペットで叩き起こされる、ジュリアのお父さんがめっちゃおソノさんの旦那 etc…)、どちらかというとアードマンや、フランスやアイルランドのアニメーションの影響……つまりヨーロッパの風を強く強く感じました。主人公の空想シーンが何度となく挟まるのもディズニー映画としては非常に変わっていて、それもいちいち楽しげで明るく無敵感にあふれていて。少年たちの人生を変えた一夏の物語をさらにピュアッピュアに染め上げています。ある種の社会性が(これから触れる箇所を除いて)丁寧に排除されていて、絵本のような箱庭の世界観がしっかり作り上げられているのが、そうだ、そういえばアニメーションってこれでも良かったんじゃないか、と思い出せたくらいの見事さ。本当に、本当に、これこそが「キッズ・ムービー」(子ども向け、ではなく、子どもたちの、という意味で)なのでは。

最後に一つだけ「真面目に」投げかけられる社会的なメッセージも、「学ぼう!」「学校へ行こうよ!」というシンプルかつ、これだけ現代の問題が細分化している中で意外に忘れられていたことへ集約されていたのも、胸に響いた。スケールも小さいし、冷静になれば世界観にツッコミどころはあるかもですが、でも、豊かで、キラキラしていて、とてもよい夏の映画でした。でも、いや、ここまでアメリカ的なアニメーションを逸脱できちゃえるのだとしたら、逆にヨーロッパでオルタナティブ・ディズニーを狙っている数々の優れたスタジオは戦々恐々としているのでは……そしてピクサーにとって、世界にとってそれは得なことなんだろうか……(この辺りの分析は専門家に任せよ〜っと)。

そしてそして、こんなに、こんなにも「2」が観たくなった映画は過去14本にはなかったなぁ……エンディングが可愛すぎてむねがくるしいのだが……ひぃ〜〜〜〜がんわいい〜〜〜〜〜〜〜。(ていうか、かわいい!! キュート、ではなく、かわいい!!!)

*1:2021年6月19日現在。