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Gang Of Youths『angel in realtime』

★★★★★

オーストラリア出身のロックバンド、ギャング・オブ・ユースのニューアルバム。これは、マジで、ほんと、とんでもない、大名盤!!!

荒々しいヴォーカル、ロマンティックなメロディ、そして一体感あるバンドサウンドと煌びやかで繊細なストリングス。これまでのGang Of Youthsらしさがさらに発展し、たっぷり詰めこまれた音楽世界は実に素晴らしい。イギリス・ロンドンに移住して創作活動を再開したバンドメンバーたちの息遣いも伝わるようなリードナンバー「in the wake of your leave」は涙が出るくらいの高揚感に包まれるロック・アンセム。間違いなくアルバムを代表する名曲だろう。

だけど、このアルバムの「すごさ」はここじゃない。アルバム全体が、ソングライター・David Le'aupepeの父親に捧げられている点にある。

生前、子どもたちに多くを語ったわけではなかったという父。しかし亡くなったのち、Le'aupepeがたどり着いた驚くべき真実――。実際にLe'aupepeが経験したその「得がたい」出来事が、物語となってアルバム全体で静かに語られてゆく。そしてサウンドは次第に、父親のルーツ(そして、出生)であった南太平洋・クック諸島の伝統音楽も入り混じってゆき――。

全ての謎が解き明かされる「brothers」を挟んで、自身も家庭を持ち、父親となったLe'aupepeがその旅の中で発見した父の姿、生き様、「嘘」、そして祈り――が、さまざまな角度から、音楽として、詩として、物語として唄われ、奏でられてゆく。主人公の中に、息絶えたはずの「父」が再び宿り、血となってその身体に流れ始めたことがわかる。言葉から、歌声から、ロックサウンドと現代音楽……それら完璧に融合した南太平洋の音楽から――。そして、父が生涯愛したあのサッカー選手にインスパイアされたメドレーの2曲、「hand of god」、「goal of the century」(そう、この二つはたった数分間の間に起きたことだった……何て見事なアイデア!)でアルバムは壮大な、あまりにも壮大な、そして穏やかな夜明けを迎える――。

本当に、本当に、本当に素晴らしい“ナラティブ”のアルバムだ。ああ……やっぱり音楽アルバムって、まだまだこんな可能性があるんだぜ!! ぜひ多くの方に聴いていただきたい、2022年最初の、規格外の傑作です。ぜひ、英詩をDeepLに突っ込んで読みつつ、ご一聴を。(そして来てくれ、日本に!!)